好太王碑は、我が国では稲荷山・稲荷台鉄剣などにみる王や大王たちが活躍したころ、朝鮮半島で倭人の動静を記録した貴重な文字資料である。それだけに、“改ざん説”をはじめ、さまざまな論争が大いに学界をにぎわした。それらを概観し、厳格な実事求是の研究姿勢で決着に口火をきった著者が、10年に及ぶ現地調査からの結論と、拓本の編年研究に新たな問題を提起(王健群)したほか、高句麗の歴史と遺跡を概観(賈士金)、さらには高句麗人の宇宙観を伝える感動的な新説(方起東)など、古代史研究の醍醐味を存分に展開している。1985年東京シンポジウムから帰国後、日本の読者のために書き下ろされた意欲的論集。